舟
まるで、舞台下にいる観衆に向けているかのように手を広げて演説口調で言うけど、
「おもいっっっ、きり思っている。君と一緒じゃなきゃ、僕は帰らないぞ」
力一杯、僕は全力で肯定した。この奇妙な友人を警察にお世話させたくはないので、僕としては珍しく一歩も引き下がらず、さんざん言い合いになって……でも、向こうも引けないのか、僕に、『帰れ』としか言わない。
ここで、僕は天の助けとも思える事実を思い出した。
「僕は参考書を教室に忘れてきたんだ! 明日宿題があるんだから、中に入るんだったら取ってこないと!」
自分で言っていて、かなりおかしいのはわかっている。そもそも中に入れないんだから。でも、こう言えば『入るなら僕も入る』『じゃなきゃ一緒に帰る』という二択を迫ることができる。入ることは出来ないんだから、これで『じゃなきゃ一緒に帰る』の選択肢を選ぶしかなく、この奇妙な友人が警察のお世話になることも無い、と僕は考えたのだ。
僕とルナの睨み合いが続く。すると、ちょっとした変化が起こった。いや、僕の眼の錯覚なんだろうけど……ルナの青い瞳が、赤く染まり始めたんだ。
「キミは、このまま家に帰る。イイネ?」
……僕の頭はモヤがかかったかのようにボンヤリとしていて、何故か顎を引いて……
「う……う、うんじゃない! 言ってるだろう、君と一緒じゃなきゃ僕は帰らないぞ!」