襖紙

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厄病神

厄病神

男子十七名の視線が突き刺さる。まるで僕は肉食獣の群れの中に放り込まれた子羊。

 そこで、自称殺人鬼兼正義の味方であり、どこぞの社長で三千年以上生きているホラ吹きは言うのだ。

「よろしくね、アキクン」

 対照的に僕は声をひそめて囁く。

「なんだよ……! 正義の味方がこんな所で何しているんだよ……! 殺人鬼なんだろう? 会社はどうしたんだよ? それにどうしてこの学校に……あぁぁ……!」

 もう、僕の思考回路はショート寸前。ちゃんとした意味のある日本語の文法が組み立てられない。頭を抱えて机に突っ伏す。

「いやネェ、最初は全部片付いたらとっとと東京に戻ろうと思ってたんだけどサァ」

 そこで僕はルナの表情を見た。いつもの悪戯っぽい笑みではない……うまく表現できないけど……僕なんかじゃ絶対手の届かない、とても遠い、何かを超えてしまった笑みを。

「この街には、スゴイ人材が揃っていてネ。ひょっとしたら、世界史上何人目かになる『洗礼者』が出るかもしれナイ。それを見物しない手はナイ」

 そして、こっちを見て、これまたいつもとは違う、妙にさわやかな笑みを浮かべる。

「それと、この学校にしたのは、アキクンがいるからダネ」

 僕がクエスチョンマークを顔にぬりまくると、今度はいつもの悪戯っぽい笑顔で、

「まあ、屋上という脅迫材料があるから、キミはしばらく、ボクの下僕カナ?」

 ウインク。小声なので、みんなにこの台詞は聞こえていない。男子の眼光に殺意が混じりだしたのを僕ははっきりと自覚する。

……僕にとっての彼女は、正義の味方でも、殺人鬼でも、社長でもない……

「この……疫病神……!」

 これほど適切な表現が他にある?!

 この罵倒に対しても、彼女はコロコロと笑い続けるだけなのだ……もうっ……!

 僕は周りの男子にルナとの関係をどう説明すればいいかと、必死で頭を回転させた。

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